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内匠研究室 Takumi Lab.
信号班・地震グループ

信号班・地震グループでは,環境電磁波から地震の前兆現象となる異常電磁波を検知し,地震の予知を行うことを目標として研究を進めている.

2005年度に行われた研究の具体的なテーマを以下に紹介する.

環境電磁波観測システムの構築に関する研究

  • 我々は,1989年より極超長波(ELF)帯における環境電磁波の観測を続けており, 現在全国約40箇所において24時間連続観測を行っている. しかし,このシステムにはOSの仕様により割り込み時間の発生などが起こり, 観測時間と記録時間の間にラグが発生することが確認されている. そこで,RT-Linux(Real Time-Linux)と呼ばれるOSにより観測システムを構築することで, ラグの発生防止を試みた.RT-Linuxとはリアルタイム処理と呼ばれる, ある幅で処理開始タイミングと処理終了までの時間制限を保障した処理を行うことができるLinuxOSと共存可能なOSである. また,OS自体が10の-9乗s(1ns)程度の時間制約まで守ることができる設計となっている.

環境電磁波からの異常検知を目的とした線形予測の研究

  • ある観測点に注目した場合,異常な電磁波が観測されなければ同様な波形の電磁波が観測されていることが分かっている. よって,過去の信号の線形和により観測された電磁波を再現し,その誤差によって異常を検知する手法である. 過去の信号を多く用いれば用いるほど,より正確な再現が行えるが,計算量が増大してしまうというトレードオフの関係がある. よって,まず過去の信号をいくつ用いるかを情報量基準IC(Information Criteria)により決定し,その係数を計算する. しかし,この手法の問題点として,大きな異常電磁波を検知することができるが,小さな異常電磁波は 検知できない場合があることが過去の研究より分かっている.このような細かい変化に,より柔軟に対応することが 今後の課題となる.

環境電磁波からの大域信号除去の研究

  • 我々が観測している環境電磁波は,大きく分けて2種類に分類できる.  1種類目が,全国で一様に観測される大域信号である. 一例として,赤道における熱雷雲などの影響により発生する電磁波放射が挙げられる. この電磁波,日本のように赤道から十分に離れた土地では,どの観測点においても一様に観測されるため大域信号といえる.  2種類目が,観測点毎に異なった値が観測される電磁波強度を表す局所信号である.電磁波は距離に応じて減衰するため, 発生源に近い観測点では大きく,遠い観測点では0に近い値で観測される.例として,地殻活動による電磁波放射がある. これまでの観測から,直下型の地震において多くの場合,その発生の約1週間前から震源域周辺の観測点において異常な 電磁波放射が観測されている.地殻活動の前兆的な電磁波放射は放射電力が大きく,また放射レベルの変化の様態も独特である. しかし微弱であるため,震源域から遠方の観測点では他の様々な信号に埋もれてしまい,ほとんど識別できなくなる. 地震を予知するためには,地殻活動による電磁波放射を捉え,検出や解析をする必要がある.正確な地震予知のためには, この電磁波成分を正確に抽出することが重要となる.  この局所信号を抽出するために,大域信号を除去する必要がある.現在,大域雑音除去には, 独立成分解析(Independent Component Analysis,ICA)やNon-negative Matrix Factorization(NMF)といった手法を用いている. ICAとは,元信号がそれぞれ独立であると仮定し,観測された電磁波がその線形和によって表現されていると考える. そして,観測電磁波から,それぞれの成分を独立性を指標として分解していく. また,NMFとは全て非負の値により構成された信号を,作用素と抽出成分との積に因数分解する手法である. この,因数分解の精度の指標として,最小二乗誤差とKullback-Leibler情報量(KL情報)を合わせて用いている.